研究課題/領域番号 |
14570610
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
久保田 龍二 鹿児島大学, 医学部, 助教授 (70336337)
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研究分担者 |
納 光弘 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (10041435)
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キーワード | HTLV-I / HTLV-I関連脊髄症(HAM) / 細胞傷害性Tリンパ球 / 変異ウイルス / 同義置換 / 非同義置換 |
研究概要 |
我々は、H14年度の本研究において3例のHAM患者の末梢血DNAをもちいて、経時的にHTLV-Iの変異ウイルスを検出した。本年度は変異ウイルスのシークエンスをもとに同義置換/非同義置換を計算し正の選択圧を検討した。また、変異ウイルスのCTLエピトープのアミノ酸を合成し、変異ウイルス特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の頻度を測定し、以下の結果をえた。 1.報告されている6個のCTLエピトープのうち、3個に正の選択圧が認められた。 2.この3個のうち1個のTax11-19は強力なCTLエピトープとして報告されており、もう1個はCTLエピトープとB細胞エピトープが重複した場所であった。 3.変異CTLエピトープを持つ変異ウイルスの集積は、3-8年の経過中認めなかった。 4.経過中変異ウイルスを認識するCTLの出現や、頻度の増加は認めなかった。 5.CTLに認識されない変異CTLエピトープをもつ変異ウイルスも、増殖は認めず、HIV感染症にみられるような変異ウイルスのウイルス交代現象は認めなかった。 以上の結果より、以下のことがわかった。 1.HTLV-I Tax領域に正の選択圧が検出され、CTLエピトープと一致していたことより、CTLは生体内でウイルス排除にはたらいていることが示された。 2.CTLから逸脱した変異ウイルスが主体となっていくような変化は認めなかった。 3.CTLに認識されない変異ウイルスも認めたが、増殖を認めなかった。このことより、ある変異ウイルスが出現し、それに対する特異的CTLが出現し、変異ウイルスの増殖を抑えている可能性は否定的である。 4.CTLを生体内で誘導し、実際に正の選択圧を起こし、その一方で、変異ウイルスの集積を起こさないこれらのCTLエピトープは、HTLV-Iのワクチン開発のための標的となりうると考えられた。
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