我々はUllrich病におけるcollagen VI欠損を世界で初めて明らかにしたが、本症の病態を明らかにするため、細胞外マトリックス及び筋膜の構成成分に対する各種モノクローナル抗体を用いて免疫組織化学的に検索した。その結果、collagen VI欠損を伴うUllrich病において筋膜上のNG2 proteoglycanの発現低下が明らかになった。Ullrich病の皮膚においてはfibronectin受容体の発現が著明に低下してたがNG2 proteoglycanの発現は対照と差がなかった。これはcollagen VI欠損の影響が組織によって異っており、組織により異る臨床症状の一因である可能性があり、現在詳細に検討中である。Ullrich病1例の遺伝子解析にて、collagen VIα2遺伝子のframeshift mutationが認められ、その下流にストップコドンが出現していることが判明したが、現在他の症例の遺伝子解析を続行中である。電子顕微鏡学的にも検索を進め、Ullrich病骨格筋の毛細血管の形態異常を報告し、本症の筋再生あるいは成熟障害の一因となることを明らかにした。遺伝子解析の無駄を省くためcollagen VIα1、α2、α3の3つの遺伝子のうち、どの遺伝子に異常があるのかをスクリーニングするためchain specificなモノクローナル抗体を用いたウエスタンブロテイングを行った。症例により残余collagen VIの量と分子量が異ることが明らかになり、今後症例を増やして遺伝子解析の結果と蛋白解析の結果を詳細に比較検討する必要がある。またUllrich病の培養細胞を用いた治療実験も現在進行中である。
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