研究概要 |
ニコチン性アセチルコリン受容体α7(α7nAChR)を過剰発現するPC12細胞を作成、細胞形質の変化を観察した。α7nAChR過剰発現PC12細胞はリガンド非存在下でコントロールに比し、高い遊走性、接着性、神経突起伸長性を示し、かつ増殖能を減じた。細胞周期分布を検討したところ、コントロールに比しG2期の細胞比率が増加していた。さらにα7nAChR発現増加に伴い生じる神経突起伸長亢進が分化誘導性のシグナルを介するか否かを検討した.α7nAChR遺伝子導入後のPC12細胞では、α7蛋白発現とほぼ同時にextracellular-signal-regulated kinase(ERK)の著しいリン酸化が生じ持続した。またERKリン酸化に引き続き,神経分化関連性接着分子であるN-cadherinの発現が亢進した。α7nAChRの発現調節とERKシグナルはリンクしながら細胞骨格構造や細胞周期調節機構に作用する.α7nAChRの増加はシナプス形成促進性に作用する可能性がある。同時に、加齢に伴うα7nAChR減少は神経回路形成性、可塑性を低下させる可能性も考えられる。 angiotensin II(Ang II)受容体タイプ1(AT1)阻害薬であるcandesartanがAng IIによる低酸素性神経細胞障害増強を抑制するか否か、また、これに関わるシグナルは何かを検討し,Ang IIによる低酸素性神経細胞障害増強にはprotein kinase Cδが関与しており、candesartanはAT1阻害を介しこれらを抑制することが明らかとなった。
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