本研究は光トポグラフと位相変調法による脳内ヘモグロビンの絶対値測定とを組み合わせ、両者の測定法の持つ欠点を相互に補うことを目的とする。光トポグラフは空間的なヘモグロビン分布を得ることは可能であるが、その変化が、ヘモグロビン量として、低値での変化か、高値での変化かの区別が付かない。一方、位相変調法による近赤外光測定は絶対値が求められる工夫がなされているが、プローブの数が少なく、空間的ヘモグロビン分布の変化をとらえることは出来ない。しかし、両測定装置は同様の光を使っているため、同時測定は出来ず、同一被験者についてそれぞれの装置で測定し、比較検討する方法を採用した。現在、光トポグラフと位相変調法による測定装置の感度の違いを調整している段階である。これは両測定法の感度が異なると、光が通過してきた脳内の部位に差が生ずる可能性が有るからである。特に脳内ヘモグロビン量の絶対値測定は光計測における重大テーマでもあり、慎重な評価が必要である。現時点では再現性などで若干の問題があり、調整中である。同一被験者での測定を実際に行い、光トポグラフで得られた結果が、全体として脳内ヘモグロビン量の絶対値としても評価出来る可能性が示されているが、位相変調法の装置の感度が若干低く、更なる調整が必要である。光トポグラフにおいては絶対値が測定できないため、手の運動負荷を加えたときの運動野でのヘモグロビン量の変化を検出し、そのときのoxy-Hbとdeoxy-Hbの変化のパターンにより、血管の反応性を検討し、内径動脈閉塞などの血管の異常の評価を行ってきたが、位相変調法による測定ではこの運動による活性化によるヘモグロビン変化が若干少ない傾向があり、その原因を検討している。これらを解決し研究の目的を達成したい。
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