研究概要 |
目的:変異SOD1(G93A)トランスジェニックマウス(Tg)の脊髄前角細胞から直接出る近位部軸索を電顕で観察することにより、同部位での軸索流の障害の有無について検討した。 方法:前発症期前期(24週令,n=2)、前発症期後期(28週令,n=2)および発症期(32週令,n=2)のTgとage-matchさせたnon-Tg(n=6)の脊髄前角細胞から直接出る近位部軸索すなわち軸索小丘(axon hillock)および初節部(initial segment)を電顕で観察した。 結果:non-TgおよびTgの脊髄前角では近位部軸索がそれぞれ総数82本(24週令で5本、28週令で71本、32週令で6本)および95本(24週令で11本、28週令で64本、32週令で20本)みられた。軸索の多くは神経細胞体から直接出ていたが、non-TgおよびTgではそれぞれ16本および9本の軸索が樹状突起から分枝していた。non-Tgの近位部軸索は、主に神経細糸(neurofilament : NF)、微小管、ミトコンドリアなどの小器官を含んでいた。初節部には通常のunit membraneの内側にundercoatingと呼ばれる電子密度の高い薄い層が認められた。Tgでは24週令でNFの増加が4本、ミトコンドリアの増加が2本の軸索にみられ、28週令ではそれぞれ12本および7本さらにNFとミトコンドリアの両方の増加が5本の軸索にみられた。32週令ではNFの増加が7本認められた。non-Tgでは28週令でNFの増加が2本、ミトコンドリアの増加が2本の軸索にみられたのみであった。 結論:これらの所見は変異SOD1Tgでは、発症前期から前角細胞の近位部軸索において速い軸索流および遅い軸索流の両方が障害されていることを示唆している。
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