研究課題/領域番号 |
14570625
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
麻生 定光 日本医科大学, 老人病研究所, 助教授 (70167914)
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研究分担者 |
大澤 郁朗 日本医科大学, 老人病研究所, 助手 (30343586)
桂 研一郎 日本医科大学, 医学部, 講師 (50297892)
太田 成男 日本医科大学, 老人病研究所, 教授 (00125832)
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キーワード | 脳虚血 / 遅発性神経細胞死 / 海馬 / アポトーシス / Bcl-xL / protein transduction domain / グルタミン酸毒素 / カルシウム |
研究概要 |
我々ははラットBcl-xL蛋白の3次構造を決定し、その構造を基に遺伝子工学的に3個のアミノ酸残基を同種のアミノ酸残基に置換することで、イオンチャンネル活性に関与している領域を安定化している3本の水素結合を破壊した。このようにして作製されたアポトーシス抑制蛋白質改良型FNKはアポトーシス抑制活性が増強されており、カルシウムイオノホア、酸化ストレスや血清除去など種々の細胞死誘導刺激に対しBcl-xLより強く細胞死を抑制した。HIVウィルスのTAT蛋白は細胞膜を自由に出入りできる蛋白質導入領域(PTD : Protein Transduction Domain)を持っている。PTDをFNKのN末に融合させたPTD-FNK蛋白は培地に添加すると培養細胞に取り込まれてミトコンドリアに移行することがわかった。PTD-FNK蛋白の投与によって虚血性神経細胞死による病態を改善することを目的とした本研究課題1年目では、PTD-FNK蛋白をスナネズミの腹腔内に投与し、3時間後に両側総頸動脈を5分間閉塞し、再灌流後7日目に灌流固定し、海馬CA1領域をヘマトキシリン・エオシン法で染色した。PTD-FNKは脳神経細胞内に運搬されて遅発性神経細胞死を抑制し、30〜80%の神経細胞が生き残った。虚血性神経細胞死ではカルシウムイオンやグルタミン酸が関与している。ラット胎児由来の大脳皮質神経細胞の初代培養系で、PTD-FNKを培地に添加することでグルタミン酸の細胞毒性を顕著に軽減し、グルタミン酸処理による細胞内カルシウム濃度の不可逆的上昇を抑制した。培養細胞内に取り込まれたPRD-FNKは約2時間で半減した。以上の結果をProc. Natl. Acad. Sci. USA(2002)に発表した。 これらの結果から、PTD-FNK投与で脳虚血後の梗塞巣を減少させることが期待され、また細胞内に取り込まれたPTD-FNKは速やかに分解されると考えられた。
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