電位依存性ナトリウムチャンネルの阻害剤であるリルゾールを連続投与すると、海馬における脳由来神経栄養因子の高レベルを長期的に維持できることをすでに報告したが、本年度は以下のことを明らかにした。 1)リルゾールの連続投与は、海馬穎粒細胞の前駆細胞数を増加させた。さらに、新生した細胞の約9割が神経細胞に分化することが判明した。 2)脳由来神経栄養因子の抗体をリルゾール投与ラットの脳室内に注入すると前駆細胞数が減少した。このことから、前駆細胞数の増加には脳由来神経栄養因子が必要であることが示唆された。 3)リルゾールによる前駆細胞数の増加は、上昇した脳由来神経栄養因子による前駆細胞の分裂促進作用によるものであり、生存維持作用ではないことが明らかとなった。 これらの結果から、リルゾールの連続投与が脳由来神経栄養因子の上昇を介して、海馬顆粒細胞の神経前駆細胞の分裂を促進することが判明した。この発見は、脳由来神経栄養因子の減少によっておきる記憶障害改善の足がかりとなろう。
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