本研究の目的はアンジオテンシンIIおよびサイトカイン両受容体刺激による情報伝達調節の相互作用(クロストーク)の新しい機序を解明することである。特にJAK/STAT系(JAKはSTATを活性化するリン酸化酵素)の活性化に重要な役割を果たしている可能性を示し、各受容体間の相互作用に関わる新しい情報伝達調節機構の存在と機序を解明することである。 1.受容体レベルでAngIIを阻害し(アンジオテンシンII受容体拮抗薬RNH-6270による前処置)、CT-1を投与した際にSTAT3活性化が無処置群と比較し抑制された。 2.リガンドレベルでAng-IIを抑制し(アンジオテンシノージェンに対するアンチセンス処置と培養液交換後にアンジオテンシン変換酵素阻害薬テモカプリルの活性体であるテモカプリラート前処置を行う)、CT-1を投与した際にSTAT3活性化が無処置群と比較して抑制された。 3.リガンドレベルでのAngIIの抑制処置を行い、閾値下濃度の外因性AngIIを前投与しCT-1によるSTAT3の活性化が回復することを示した。(AngII抑制下での外因性AngIIのSTAT3活性化の濃度依存性を検討し、「閾値」を決定した後に施行した。) 4.カベオラドメインの機能的阻害(fillpinの投与)を行うとCT-1によるSTAT3の活性化が抑制された。また、filipinを除去した際の(filipinの効果は可逆的であると報告されている)にはその抑制が解除された。 5.上記、それぞれの条件下での心筋肥大の程度を比較した。CT-1による心肥大は(1)RNH-6270、(2)テモカプリラート+アンジオテンシノージェンのアンチセンス処置、(3)filipinの投与によりそれぞれ抑制された。 6.カベオラとAngII受容体およびgp130の会合を免疫沈降法およびウエスタンブロット法により確認した。
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