心房内血栓形成の素因として内皮細胞におけるvon Willebrand factor(vWF)の発現とその血栓形成における役割を検討した。 1、摘出心耳組織にてvWFの発現および血栓形成との関係を免疫組織化学染色およびin situ hybridizationにて調べた。心内膜内皮細胞におけるvWFの発現は種々の基礎心疾患の間で、さらに同一例でも左右の心耳組織の間で著しく異なっていた。一方、心筋内血管の内皮細胞ではいずれの標本でも明らかなvWFの発現を示した。Immunogold法を用いた免疫電顕にてvWFは内皮細胞内のWeibel-Palade bodyに貯蔵、さらに内皮細胞下組織にも分布していた。vWFに対する免疫組織化学染色の強度とin situ hybridyzationでのmRNA発現の程度とは相関していた。この心内膜内皮細胞におけるvWFの発現は心房細動の存在よりも、むしろ心房壁の構造的リモデリングの程度と密接に関連していた。心内膜表面における血栓形成を血小板(GP Ib/IX)とフィブリン染色にて調べた。心内膜表層への薄い血小板付着は強いvWF発現を示した標本で頻繁に見られたが、フィブリン染色を伴っていなかった。血栓が内腔に向かってさらに増大するとその心内膜付着部に血小板だけでなくフィブリン染色も認めた。これらの結果は心内膜vWFを介する血小板付着が血栓形成初期の段階において重要であることを示唆する(投稿中)。 2、培養内皮細胞を用いてvWFの発現を調べた。まずヒト臍帯静脈内皮細胞を用いて培養条件およびvWFの発現の定量的評価法を検討した。内皮細胞培養は4継代目でvWFの発現を定量的RT-PCR(vWF/GAPDHの比)にて評価することにした。ヒト臍帯静脈内皮細胞は進展させない状態でも明らかなvWFの発現を示した。心内膜内皮細胞との違いが示唆される。
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