本研究のためにCAGプロモーター下に改変緑色蛍光タンパク質(EGFP>を発現する組替えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、AV-CAG-EGFPを作成した。ex vivoで総頚静脈片にAV-CAG-EGFPとNIacZの入ったVSV-Gシュードレトロウイルス(VSV-G NIacZ、東大医科研宿主寄生体学分野、伊庭英夫先生から供与)を用いてウイルスを感染させ、それぞれマーカー遺伝子発現に関して検討したが、この系ではアデノウイルスに比べて双方のベクターとも遺伝子発現は非常に弱いと判断された。一方、当研究室でヒト胎盤由来間葉系細胞群(hPDMC)を用いた細胞移植療法に関する検討を行っているがAV-CAG-EGFPを用いて検討を行った所、hPDM細胞群はrAAVによる遺伝子発現効率が非常に良い性質を有することを新たに見いだした。アデノウイルス非存在下でAV-CAG-EGFPを感染させると、hPDMCにおいてはヒト臍帯静脈由来内皮細胞やラット大動脈由来平滑筋細胞よりはるかに高いレベルのEGFPの発現を認めた。更にFACSを用いた解析でAV-CAG-EGFP感染によりhPDMC画分に陽性細胞群のピークを認めたので、hPDMC中にはrAAVを介した遺伝子導入に対して高い感受性を持っているある特定の細胞群が存在すると考えられた。またAV-CAG-EGFP感染後のhPDMC中で約1%の細胞で安定した導入遺伝子発現が感染1ヶ月後まで認められ、細胞移植療法に有用と考えられ、現在更に検討を行っている。
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