本研究においてCAGプロモーター下に改変緑色蛍光タンパク質(EGFP)を発現する組替えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、AV-CAG-EGFPを作成した。ex vivoで総頚動静脈片にAV-CAG-EGFPを感染させ、EGFP発現に関して検討したが、期待された遺伝子発現は認められなかった。一方、ヒト胎盤由来間葉系細胞群(hPDMC)を用いて検討を行った所、hPDM細胞群はrAAVによる遺伝子発現効率が非常に高いことを見いだした。アデノウイルス非存在下でAV-CAG-EGFPを感染させると、hPDMCにおいてはヒト臍帯静脈由来内皮細胞やラット大動脈由来平滑筋細胞よりはるかに高いレベルのEGFPの発現を認めた。更にFACSを用いた解析でAV-CAG-EGFP感染後のhPDMC画分にEGFP発現細胞群のピークを認めたので、hPDMC中にはrAAVを介した遺伝子導入に対して高い感受性を持っているある特定の細胞群が存在すると考えられた。またAV-CAG-EGFP感染後のhPDMC中で約1%の細胞で安定した導入遺伝子発現が感染1ヶ月後まで認められ、細胞移植療法にも有用と考えられた(Microbiol Immunol.2003;47(1):109-16)。 hPDMC細胞群はVEGF等の血管新生因子を多く産生するので、閉塞性動脈硬化症を模したマウス下肢虚血モデルでhPDMC細胞移植療法の有用性について検討を行った。レーザードップラーを用いた計時的な虚血部血流に関する機能解析の結果及び組織学的検討結果からhPDMC細胞移植療法の有用性を示唆する結果が得られた。今後rAAV等のベクターを用いて遺伝子改変を行った細胞移植の有用性に関して更なる検討が必要と考えられる。
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