研究概要 |
血管内膜障害における平滑筋細胞増殖の分子生物学的機序を解明するために、種々の動物モデルを用いて実験を実施した。まず、小動物実験モデルを用いて病態解析と中和抗体によるその予防を検討した。冠動脈形成後再狭窄に似た病理所見をきたすマウス動脈傷害モデルを作成し、接着分子のなかでも特に血管に特異的であるVCAM-1の発現と中和抗体の予防効果を検討した。この解析結果から、血管傷害後にはVCAM-1の発現が血管内膜に増強し、その結果血管の炎症と平滑筋細胞の増殖が増強された。この進展を抑制するために、我々はVCAM-1とそのリガンドであるVLA-4の中和抗体を動脈傷害後からマウスに投与した。その結果、平滑筋細胞の増殖が抑制され、内膜肥厚の程度を軽減することに成功した。(Suzuki J.et al. Acta Cardiologica, in press)また、臨床応用のため、ミニブタ冠動脈傷害モデルを作成して、その部分に炎症を抑制するNF-kBデコイを導入し、その導入効率と安全性を検討した。その結果、臨床での冠動脈形成後再狭窄をNF-kBデコイで予防することが可能であると判断し、臨床でその効果の検討を開始した(Suzuki J.et al. Circ J, in press) また、我々は心臓移植後の血管病変の進展にTNF受容体が重要な役割を果たしていることを明らかにした(Suzuki J, et al. Am J Transplant, 2003)。さらにその進展予防のために、ICOSの中和抗体(Kosuge H. et al. Transplantation, 2003)やEgr-1に対するアンチセンス導入(Wada Y.et al. J Surg Res, 2003)が有用であることも報告した。
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