研究概要 |
(1)心筋イオンチャネルの検討 (方法)マウスのES細胞において細胞分化を誘導して最終的にbeating能力を有する心筋細胞へ分化させる。これらの心筋細胞に解糖系代謝阻害薬およびミトコンドリア酸化還元酵素阻害薬による二重の代謝抑制を行い、膜接着型パッチクランプ法を用いて心筋細胞膜ATP感受性Kチャネルを活性化し、その発現の程度や電流量を記録する。また同時にKチャネル開口薬および遮断薬に対する反応様式を検討する。 (結果)ES細胞から得られた心筋細胞においては二重の代謝抑制を加えても、ATP感受性Kチャネルの活性化が非常に困難であり、細胞がshrinkageする頃に初めて活性化することが多く、記録できてもすぐにパッチ膜が壊れてしまい、安定した電流記録が十分に行えなかった。短い記録ながらも、その電流電圧曲線及び持続性の活性化様式からATP感受性Kチャネルと考えられた。しかしこの電流はGlibenclamideによって多くが抑制不能であった。この理由としてcriticalな状態で初めて活性化されるES細胞が多かったことが原因と考えた。約5MΩのパッチ膜で活性化されたATP感受性Kチャネルの数は最大でも2個であった。また数少ない細胞形態が保たれている状態で活性化されたATP感受性Kチャネルは成人細胞と同じく濃度依存性にGlibenclamideで抑制された。Kチャネル開口薬に対する反応ではES細胞も成人細胞と同等にpinacidilで活性化された。以上からES細胞は虚血に強い可能性が示唆された。 (2)超微形態の検討 (方法)ES細胞から分化した心筋細胞をグルタールアルデヒドおよびオスミウムによる電顕固定後に透過型および走査型電顕にてその超微形態やmyofibril, sarcomereなどを観察し、その形態とATP感受性Kチャネルの発現や分布との関連性につき検討する。 (結果)ES細胞から分化した心筋細胞においてはmyofibril, sarcomereが成人細胞に比して非常に疎であり、これはATP感受性Kチャネルの発現数自体が少ないという上記結果とよく一致していた。
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