研究概要 |
(1)Tumor necrosis factor(TNIF)-αノックアウト(KO)マウスにおいて,左冠動脈前下行枝を30分結紮した後,2時間・6時間および24時間の再灌流を行い,虚血/再灌流障害を検討した.その結果,wild-type(WT)マウスに比して,TNF-αKOマウスにおいて生存率・梗塞面積ともに有意に改善し,虚血/再灌流障害の形成にTNF-αが関与していることが示された.なお,この際の死因は房室ブロックによる除脈であった.WTマウスにおいては,TNF-αKOマウスに比して接着因子(ICAM-1)・ケモカイン(MIP-1,MIP-2)の発現が亢進し,細胞浸潤も著明であった.以上の成績から,TNF-αは接着因子やケモカインの発現を介して細胞浸潤誘導し,心筋虚血/再灌流障害を惹起することが示された. (2)ラットの心臓を摘出し,ランゲンドルフ灌流装置を用いて虚血(pump-off global ischemia)/再灌流を行い,心機能・逸脱酵素・病理組織像から虚血/再灌流障害を検討した.その結果,好中球を含まない灌流液に比し,好中球を含む灌流液を用いた際,心筋虚血/再灌流障害は増悪した.好中球を含む灌流液にさらに補体を追加すると心筋虚血/再灌流障害のさらなる悪化を生じた.この際,TNF-αや接着因子・ケモカインの発現を認め,これらによる炎症細胞浸潤の誘導が心筋虚血/再灌流障害の形成のおいて重要であることが示唆された.
|