研究概要 |
in vivoにおける検討:マウス冠動脈の前下行枝を結紮して30分虚血,2時間再灌流を施行した.不整脈の発生・心機能・梗塞サイズを検討した結果,それらはいずれもwild-typeマウスに比べて,TNF-αKOマウスにおいて有意に改善していた.またTNF-αKOマウスにおいて転写因子NF-κBの活性化は抑制されており,IL-1やIL-6などのサイトカインも低下していた.さらに,ICAM-1・VCAM-1などの接着因子,MIP-1,MIP-2・MCP-1などのケモカインの発現が少なく,虚血領域での炎症細胞浸潤も軽度であった.このことから,2時間再灌流において,TNF-αがNF-κBの活性化を介して接着因子やケモカインを発現させ,炎症細胞浸潤を誘導して再灌流障害の形成に関与していることが示された.同様に6時間および24時間の再灌流においてもTNF-αKOマウスにおいて再灌流傷害が軽度であった.wild-typeマウスは再灌流後10時間位からTNF-αKOマウスに比して著明に生存率が悪化した.この死因の多くは房室ブロックであり,広範囲な炎症細胞浸潤によるものと推定された.一方,再灌流を行わないpermanent occlusionにおいては,虚血後24時間で梗塞面積を比較したところ,再灌流群とは逆にわずかではあるがTNF-αKOマウスにおいて有意に梗塞面積が大であった. 骨髄移植マウスにおける検討:マウスにx線を照射した後,donorマウスの骨髄細胞を尾静脈より投与して骨髄移植マウスを作成した.recipientとしてwild-typeマウスおよびTNF-αKOマウスを使用し,donorとしてgreen fluorescence protein (GFP)トランスジェニックマウスを使用した.この骨髄移植マウスにおいて2時間虚血/再灌流を行ったところ,梗塞領域に骨髄由来と考えられるGFP陽性細胞を認めた.recipientとしてwild-typeマウスを用いた群とTNF-αKOマウスを用いた群を比較したところ,予想に反してTNF-αKOマウスを用いた群の方が梗塞領域における骨髄由来細胞の定着が大であった.
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