研究概要 |
心筋特異的ホメオボックス遺伝子であるNkx2.5遺伝子にGFPをマーカーとしてノックインした細胞株より得られた胚葉体から、fluorescence activated cell sorter(FACS)を用いてES細胞由来心筋細胞(ESCM)を分離し、その電気生理学的特性を調べた。パッチクランプ実験によりESCMの長期培養(28日間)に伴う活動電位波形の変化を調べたところ、持続的な自己拍動を示す洞結節(ペースメーカー)細胞型、静止しているがカルバミルコリン添加で静止電位が過分極を示す心房筋型、カルバミルコリンに反応を示さない心室筋型へと分化した細胞が見られた(Hidaka, Lee et al.FASEB journal 2003)。また、ESCMとnative cardiac myocyteとの電気的結合の有無を調べるために、新生マウス心筋細胞をあらかじめ培養しておいた多電極培養皿に加えて共培養した。その結果、両細胞群間で電気的に同期した自己拍動が見られた。さらに、免疫不全マウスの左室自由壁にESCMを注入してin vivo細胞移植行い、体表面心電図を記録した。ESCMを移植したマウスでは、不整脈や心電図波形の異常は見られなかった。一方、完全房室ブロックを作成したマウスの房室結節近傍にESCMを注入すると、数日後に房室伝導の改善が見られた。これらの結果より、ES細胞由来心筋細胞は既存の心筋組織と電気的なsyncytiumを形成し得、心臓への細胞移植に利用可能であると考えられた(Lee, Hidaka et al.Circulation 2002,abstract)。現在、「バイオペースメーカ」作成のため、ES細胞から主に心臓刺激伝導系細胞に分化・誘導させる因子方法を探索する実験が進行中である。
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