研究概要 |
重症心不全の新たな治療としての"心筋細胞移植による再生医療"は、近年注目され多くの研究が発表されつつある。心筋細胞移植に用いる細胞として、ES細胞由来および骨髄間質細胞由来の心筋細胞が候補とされる。両者とも自己拍動能を有しており、実際移植された誘導心筋細胞がどのような機能的分化を果たし生着するかは全く不明である。移植心筋細胞の生着に伴って起こる機能分化に関して多くの研究者が検討中であるが、その前の基礎段階の実験として、生理的な機能分化である、胎生期から成熟期への発達に伴う心筋細胞の機能分化を詳細に検討し、その分化のしくみを明らかにすることが必須である。 平成14年度は、心筋の自動能に大きく関わるT型Ca^2+チャネル(α1G,α1H)、L型Ca^<2+>チャネル(α1C,α1D)の胎生期マウス心室筋の発達に伴う変化の解析を、分子生物的(mRNA解析;リアルタイムPCR法、蛋白定量;ウェスタンブロット法、化学発光を用いて)および電気生理学的手法(パッチクランプ法)を用いて行った。丁型Ca^<2+>チャネルのmRNAは、胎生初期はα1Hが主として発現し、発達とともにその発現が減少し、胎生後期および成熟期ではα1Gが主に発現していた。電流解析ではT型Ca^<2+>電流は胎生期のみ記録でき、そのNi2+感受性はα1Hのphenotype発現を示した。L型Ca^<2+>チャネルは、胎生初期はα1Cと共にα1D mRNAの発現が有意に認められ、電流解析でもα1Dのphenotypeの発現が疑われる活性化曲線が記録できた。現在、T型Ca^<2+>チャネル(α1G,α1H)とL型Ca^<2+>チャネル(α1C,α1D)のウェスタンブロット法を用いた蛋白発現定量解析を試みている。
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