免疫グロブリンの抑制性Fcレセプターを介した心筋炎・心不全治療に関する研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14570656
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 岸本 千晴 京都大学, 医学研究科, 助手 (70169845)
• 研究分担者: 中村 肇 京都大学, 医学研究科, 助教授 (70303914)
• キーワード: 心筋炎 / 免疫グロブリン / Fcレセプター / Fab / 心筋ミオシン

研究概要

最近、原因不明の自己免疫疾患や炎症性疾患での免疫グロブリン療法の有効性が注目されている。その作用機序は不明であるが、respiratory syncytialウイルス感染予防効果に代表される中和抗体としての作用、ITP(idiopathic thrombocytopenic purpura)での成功でみられるように、Fcレセプターのブロック作用、活性化された補体の不活性化や、炎症性サイトカインに対するdown-regulatorとしての作用などが仮定されている。事実、これらの作用が複合的に働き、川崎病や多発性筋炎では著効している。さらに、川崎病に伴った心筋炎でも著効をみたとの報告が続いた。そこで申請者・岸本千晴は、その病状の進展に、病原としてのウイルスのみならず、炎症性サイトカインが関与している実験的心筋炎あるいは心筋症での詳細な検討を行い、その有効性を確認するとともに、免疫グロブリンのFc部分が効果発現に関与している結果を得つつある。そこで本研究では実験的心筋炎モデルならびに臨床症例で、免疫グロブリンの抑制性Fcレセプターを介する新しい治療の可能性を検討した。14年度の研究により、Fcレセプターのうちサイトカイン誘導などに関するnegativeなシグナルである抑制性Fcレセプターの関与が示された。
平成15年度は、心筋障害での自己免疫機序に対する効果を検討すべく、ラットのミオシン感作型心筋炎モデルで研究を行った。その結果、インタクト型およびFc型Igで心筋炎の抑制がみられたがFab型Igでは心筋炎の抑制がみられないことが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] Miyamoto Miki et al.: "Cutaneous arteriolar thioredoxin expression in patients with heart failure"Circulation Journal. 67. 116-118 (2003)
• [文献書誌] Yuan Zuyi et al.: "Immunoglobulin treatment suppresses atherosclerosis in apolipoprotein E-deficient mice via the Fc portion"American Journal of Physiology. 285. H899-H906 (2003)
• [文献書誌] Yuan Zuyi et al.: "Beneficial effects of low-dose benedipine in acute autoimmune myocarditis. Suppressive effects on inflammatory cytokines and inducible nitric oxide synthase"Circulation Journal. 67. 545-550 (2003)
• [文献書誌] Yuan Zuyi et al.: "Immunohistological analyses of myocardial infiltrating cells in various animal models of myocarditis"Experimental & Clinical Cardiology. 8. 13-16 (2003)
• [文献書誌] Kishimoto Chiharu et al.: "Anti-oxidant effects of coenzyme Q_<10> on experimental viral myocarditis in mice"Journal of Cardiovascular Pharmacology. 42. 588-592 (2003)
• [文献書誌] Kishimoto Chiharu et al.: "An in vivo model of autoimmune post-coxsackievirus B3 myocarditis in severe combined immunodeficiency (SCID) mouse"Cardiovascular Research. 60. 397-403 (2003)