【目的】狭窄血管の下流において白血球は乱流による刺激を受けると考えられるが、このような部位は粥状動脈硬化病変が起きやすい。このようなシアストレスの変化は内皮細胞における接着因子の発現増加を来たし、それが動脈硬化と関連すると考えられている。白血球にも同様なストレスがかかっていると考えられるが、そのストレスによる白血球への影響に関してはほとんど知られていない。本研究においては乱流が単球における接着分子に影響を与えることにより、その接着に変化を来すか否かを検討した。また、コレステロール低下剤であるスタチンがその接着に影響を及ぼすかいなかについて検討した。【方法】THP-1細胞を用い、ボルテックスミキサーにより細胞をボルテックスしたのち、可溶型vascular cell adhesion molecule-1(VCAM-1)及びフィブロネクチンへの接着を検討した。また、プラバスタチン、フルバスタチンにより24時間THP-1細胞を前処置した後、ボルテックスミキサーにより細胞を1500rpmで5秒間ボルテックスし、可溶型VCAM-1及びフィブロネクチンへの接着を検討した。【結果】コントロールにおいてはボルテックス刺激によりVCAM-1及びフィブロネクチンに対する接着が約7倍した。細胞内カルシウムの影響を検討するため、細胞内のカルシウムのキレート剤であるBAPTAをボルテックスの前に加えると、その接着がほぼ完璧に抑制された。また、100μMまでのプラバスタチンで前処置してもボルテックス後の細胞接着に影響はなかったが、フルバスタチンと前処置すると濃度依存性に細胞接着が抑制された。このフルバスタチンによる細胞接着抑制効果はメバロン酸の添加により回復した。また、フルバスタチン、及びプラバスタチン前処置により、THP-1細胞におけるβ1インテグリンの発現には変化を認めず、Rho阻害剤であるC3によってボルテックス後の細胞接着に影響は認めなかった。【結論】THP-1細胞において生じるポルテックスによる細胞接着性の亢進は細胞内カルシウム依存性の接着であり、フルバスタチンにより特異的に抑制された。このメカニズムとしてRhoは関与していないことが示唆された。この結果はフルバスタチンによるプレオトロピック効果と考えられ、その新たな作用であることが考えられる。フルバスタチンは乱流による単球-内皮細胞の相互作用を抑制しうる可能性を示唆した。
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