動脈硬化の新たな危険因子として、慢性持続性の感染が大きなリスクとなることが明らかにされ、特にクラミジア・ニューモニアに対しては、抗菌薬による治療の大規模介入試験が実施されている。クラミジア・ニューモニアは、経気道的に感染した後、血管内皮細胞への感染が起こり、局所での接着因子やケモカインの発現を介して、動脈硬化の発症・進展に深く関係すると考えられている。血中のクラミジア抗体を測定することで、臨床的にも持続感染の有無を確認することが可能であるが、急性期の感染のみで終わる場合(既感染例)も多く、持続感染に至る機序は未だ明かではない。 2年間の研究期間においてクラミジア・ニューモニア持続感染が動脈硬化進展につながるメカニズムを疫学的な点から検討した。おもな結果は3点得られ:(1)一般住民集団におけるクラミジア・ニューモニエ抗体価が、血中の可溶性接着因子であるICAM-1、VCAM-1およびケモカインであるMCP1濃度と有意な相関を示すことを報告した。また、(2)クラミジア・ニューモニア抗体価と酸化ストレスの指標との間に有意な正の関連を認め、クラミジア・ニューモニア持続感染が酸化ストレスの原因となるだけでなく、高酸化ストレス状態はCp感染の誘因となる事を示した。(3)さらに、557名の一般集団において動脈硬化関連遺伝子変異とクラミジア・ニューモニア抗体価との相関研究を行い、アンジオテンシノーゲン遺伝子多型M235Tがクラミジア・ニューモニア持続感染と関連することを見出した。(1)はすでに論文発表を行っており、(2)は昨年の国際学会において口頭発表を行い、(3)は今年の国際学会おいて発表の予定であり、いずれも現在論文化中である。
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