研究課題
これまでの検討により、圧負荷心不全モデルにおける新組織の変化は、大きく心筋細胞の変化と冠動脈平滑筋の変化に分けることができ、心筋細胞に対する影響には主にAT1受容体刺激が関係しているのに対し、冠動脈平滑筋の変化にはAT1受容体刺激に加えてAT2受容体刺激も重要であると考えられる。そこで今年度は、in vitroの実験系において、線維合成に及ぼすアンジオテンシンIIの作用と、細胞内シグナル伝達機構におけるキナーゼ系・ホスファターゼ系の関わりを検討した。マウス新生児皮膚より分離培養した線維芽細胞はアゴニスト結合法による測定でAT1およびAT2両受容体を発現していた。これにアンジオテンシンII(10^<-7>M)を作用させると、コラーゲン合成が増加するとともに線維分解阻害に関わる酵素であるTIMP-1の発現を増加させた。このアンジオテンジンIIの作用はAT1受容体プロッカーにより阻害され、AT2受容体プロッカーでは逆に増加した。この結果は、AT1受容体刺激が線維合成を促進するのに対し、AT2受容体刺激は拮抗的に線維合成を抑制する作用を有することを示している。このことは、AT1受容体欠損マウスより単離した線維芽細胞においてアンジオテンシンIIがIGF-1による線維合成を抑制したことからも裏付けられた。さらに、AT1受容体欠損線維芽細胞にホスファターゼの一種であるSHP-1の不活性変異遺伝子を導入するとアンジオテンシンIIによる線維合成とTIMP-1の発現が有意に抑制された。この結果より、AT2受容体刺激による線維合成抑制作用は細胞内SHP-1を含むホスファターゼが関与する可能性が考えられた。
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