研究課題/領域番号 |
14570674
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
毛利 正博 九州大学, 医学部附属病院, 講師 (60264032)
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研究分担者 |
伊藤 昭 九州大学, 医学部附属病院, 医員
下川 宏明 九州大学, 大学院・医学研究院, 助教授 (00235681)
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キーワード | 冠循環 / 微小循環 / 心筋虚血 / Rhoキナーゼ / 狭心症 / 微小血管狭心症 / 冠攣縮 |
研究概要 |
本研究の目的は、冠循環において血管平滑筋のRho/Rho-kinase系の活性亢進が心筋灌流調節異常、ひいては心筋虚血の原因となっているという仮説を検討することである。とくに、これまで研究が進んでいない冠微小循環に注目した。 我々の施設におけるこれまでの動物モデルで得られた研究結果に基づいて、Rho-kinase阻害薬であるfasudilが臨床でも安全に狭心症患者に投与できるかどうかについてまず検討した。in vitroの検討で得られたIC_<50>値に近い濃度で冠動脈内に直接fasudilを15分間投与し、血圧、脈拍数、冠血流量に影響がないことをヒトにおいて確認した。またこの投与量では、狭心症などの副作用もまったく認められなかった。 引き続き、大きな冠動脈の攣縮による安静時狭心症患者20症例において、fasudilがアセチルコリンによる冠動脈の過収縮反応および心筋虚血の発生を予防するかどうかを検討した。その結果、fasudilが攣縮部の過収縮反応を著明に抑制し心筋虚血の発生を防止すること、非攣縮部においては生理的な血管収縮反応に影響を与えないことが確認された。これらの結果から、動物モデルと同様に、Rho/Rho-kinase系が血管過収縮反応に関与していること、fasudilがヒトの冠循環においてもRho-kinase阻害効果を持つことが示唆された。 我々のプロトコールが、安全かつ有効なRho-kinase阻害効果をヒトの冠循環において持つことが確認できたので、さらに冠微小血管攣縮によると考えられる微小血管狭心症患者18名において検討を進めた。Rho-kinase阻害薬は85%の症例において、微小血管攣縮によって生じる心筋虚血を抑制した。これらの結果は、冠微小循環においてもRho-kinase系の活性亢進が冠血流調節の破綻をもたらしていることを初めて証明したものである。
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