自己末梢血幹細胞の心筋細胞への注入と血管新生効果の判定 ミニ豚10頭に対して、開胸下に梗塞部位(risk area)に26G針を用いて末梢血幹細胞を分注したPBSCT群と、ミニ豚5頭に対して、開胸下に梗塞部位(risk area)に26G針を用いて生理食塩水を分注したcontrol群とを比較した。コントラスト心筋エコー法による梗塞サイズはcontrol群にくらべて明らかにPBSCT群で小さかった。2カ月後の冠動脈造影における側副血行の発達度合いは全く無しをグレード1として十分発達している場合をグレード4として半定量評価を行った。その結果、PBSCT群では側副血行スコアが3.7±0.7であったが、control群では1.6±0.6で有意にPBSCT群で増加していた。 従来成人個体における血管新生は、既存の血管内皮細胞の増殖と遊走によるもののみであると考えられてきた。いわゆる狭義のangiogenesisである。しかしながら、成人の末梢血中には、内皮細胞に分化しうる内皮前駆細胞(EPC)が存在することが最近明らかにされた。この細胞が血管発生型の血管新生に関与することが明らかになった。いわゆるvasculogenesisである。現在のところ、内皮前駆細胞による血管発生型の血管新生が、成人の生理的、病的な血管新生のどれくらいの比率と貢献度を示すかは明らかにはなっていない。今回我々が示した結果からは、G-CSFにより十分末梢血幹細胞の数を増やすことにより臨床応用できる可能性が十分考えられる。下肢の血管に対しても、骨髄細胞の移植が有意に側副血行や血管新生の改善が見られたとの報告がある。しかしながら、まだまだ動物での報告が多く、ヒトでの大規模臨床試験の実施とその結果が待たれる。
|