研究課題/領域番号 |
14570691
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
松岡 博昭 獨協医科大学, 医学部, 教授 (20111544)
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研究分担者 |
錦見 俊雄 獨協医科大学, 医学部, 助教授 (80291946)
石光 俊彦 獨協医科大学, 医学部, 助教授 (80232346)
小林 直彦 獨協医科大学, 医学部, 講師 (90254945)
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キーワード | AII依存性高血圧ラット / DOCA食塩高血圧ラット / 心筋リモデリング / Rho-kinase / Y-27632 / カンデサルタン / セリプロロール / ワートマニン |
研究概要 |
アンジオテンシンII(AII)依存性高血圧ラットとDOCA食塩感受性高血圧ラットを用いて研究を行い、以下の様な成績を得た。 1.AIIを持続注入して作成したAII依存性ラットの心筋ではりモデリング(微小血管の内膜肥厚と血管周囲の線維化)がみられた。これらの心筋においてはPAI-1、c-fos、RhoAとRho-kinase発現の亢進およびphospho-p44/p42 ERK活性とphospho-p70S6 kinase活性の元進が認められた。AII依存性高血圧ラットにRho-kinase阻害薬であるY-27632あるいはAII受容体拮抗薬であるカンデサルタンをAIIと同時期から投与すると、心筋のPAI-1、c-fosの発現はY-27632とカンデサルタンにより抑制され、RhoAとRho-kinaseの発現はY-27632により抑制された。また、phospho-p44/p42 ERK活性とphospho-p70S6 kinase活性はY-27632では抑制されず、カンデサルタンで抑制された。リモデリングはY-27632とカンデサルタンで同程度に改善された。従って、AII依存性PAI-1の発現にはRho-kinase経路とERK経路が独立して存在し、Rho-kinseを抑制することよりリモデリングが改善することにより、Rho-kinase阻害薬が治療に応用できる可能性が示唆された。 2.DOCA食塩高血圧ラットの心筋ではリモデリングがみられ、心筋のeNOS活性とAktの活性が低下し、活性酸素種(ROS)の産生源であるNAD(P)H oxidaseおよび接着因子であるVCAM-1発現が亢進し、p44/p42 ERK活性とp65NF-κB活性ならびにTGF-β1とc-fos発現も亢進していた。β遮断薬のセリプロロールは心肥大とリモデリングを改善すると共にeNOS活性とAkt活性を改善したが、PI3K阻害薬であるワートマニンでこの改善作用は阻害された。セリプロロールはNAD(P)H oxidase、VCAM-1、TGF-β1、c-fos発現およびp44/p42ERK活性とp65NF-κB活性を抑制した。従って、セリプロロールの心肥大と心筋リモデリングの改善の機序にはPI3K-Akt経路を介したeNOSの活性化、酸化ストレスによるNF-κBを介したVCAM-1の抑制、MAP kinaseからc-fosを介したTGF-β1発現の抑制などが関与している可能性が示された。
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