心房細動の起源として肺静脈から発生する異常自動能が関与することが判明し、これまでヒト肺静脈周囲の心房筋を解剖学的および病理組織学的に検討してきた。その結果、肺静脈周囲の心房筋の走行が一部で非常に錯綜しており、その心房筋の異方向性が興奮伝導に変化をもたらす可能性が示唆された。また、肺静脈のとくに抹消側で心筋細胞の膨化、空砲変性、間質の線維化など多彩な組織所見を認めるとともに、強い間質繊維化の中に埋没する形で、一般心房筋に比べ明らかに細胞径が小さく洞結節と類似の小細胞を認め、異常自動能を有する細胞が存在する可能性も示唆された。これらの結果をふまえて、さらに異なった視点から不整脈原性となりうる解剖学的基質を明らかにするために、心房筋の興奮伝導に関与するgap junctionに関連する蛋白質connexinに対する抗体を用いて、ヒト肺静脈周囲心房筋における分布について観察し、細胞間レベルでの興奮伝導について検討した。剖検心から4本の肺静脈を切り出し、凍結切片を作製した。7μ厚で薄切した後、Hematoxylin-Eosin染色、Azan染色などを施行するとともに、connexin 40、connexin 43、connexin 45に対する抗体を用いて免疫染色を施行した。対象を生前に心房細動などの心房性不整脈を有した群と、心房性不整脈の既往のない群に分け検討した。Connexin 40は心房性不整脈の既往のない群に比べて心房性不整脈を有した群で不均一に分布し減少していた。Connexin 43、45に関しては両群で有意な差は見られなかった。今後、症例数を増やすとともに、蛍光抗体法も取り入れてさらに検討する予定である。
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