研究概要 |
ステント挿入後の新生内膜増殖と細胞周期関連蛋白の発現を剖検された冠動脈を用いて免疫組織学的に検討した.対象は30例,39ステント.植え込みより死亡までの期間は0〜235日であった.H-E等の一般染色に加え,抗cyclin D1,Cdk4,p16,p21,p27抗体を用いた免疫染色を施行した.また,血管平滑筋の同定のため抗α-SMA抗体,増殖細胞の同定のため抗PCNA抗体を,また増殖型平滑筋同定のため抗c-fms抗体を用いた.症例をステント植え込みから死亡までの日数で0〜14,15〜60,60日以降の3群に分け比較検討した. 植え込み後早期ではステントワイヤー周囲に血栓を認め,c-fms陽性の増殖型平滑筋が同部位に発現したが,60日以降では減弱した.PCNAの発現も同様であった.α-SMA陽性の収縮型平滑筋細胞は15日以降に増加した.細胞周期関連蛋白では,cyclin D1はステント挿入後早期より新生内膜に発現したが60日以降で発現は減弱した.それに対しCdk-inhibitorであるp27は14日から60日にかけて発現が抑制されていた.p16,p21の発現はステント植え込み後の変動を認めなかった.近年,再狭窄予防のため細胞周期関連蛋白に影響を与える薬剤を溶出させるステントが注目されているが,本研究の結果でもp27のdownregulationやcyclin D1のupregulationを制御することが再狭窄予防に有効である可能性が考えられた.さらに我々は核内レセプターのひとつで,血管平滑筋の増殖を制御すると考えられているPPARの発現についても同様に検討した.新生内膜の増殖とともにPPARδは血管平滑筋細胞に発現が認められたが、PPARγの発現は植え込み後から長期にわたってわずかにみられるのみであり,細胞周期関連蛋白と特にPPARδ間の関連性が示唆された.
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