研究概要 |
25週齢の拡張型心筋症(DCM)モデルハムスターUM-X7.1を30匹およびコントロールとしてのGoldenハムスター20匹について、全身麻酔後、両側腸骨から約2mlの骨髄液を採取し、比重分離後、CD4,CD8a等の抗体を用いて未分化な骨髄幹細胞を得た。これら幹細胞を含む単核球をDiIでラベルした。全身麻酔開胸下にDiIラベルした骨髄幹細胞を含む単核球液を左室心筋内に直接筋注した。Goldenハムスターでは全例1週間生存した。しかし、DCMモデルハムスターUM-X7.1では、1日以内に10匹、2日後に5匹、4日後に6匹が死亡した。主な死因は血圧低下、不整脈、心不全死であった。そこで、25週齢のDCMモデルハムスターUM-X7.1(10匹)について全身麻酔後、開胸のみを行ったところ、1日以内に3匹が、2日後に2匹が死亡した。主な死因は、血圧低下であり、他は、不整脈であった。25週齢のDCMモデルハムスターUM-X7.1では、すでに拡張末期径の増大、駆出率の高度の低下、心重量の増大、左室壁の広範な線維化、心筋細胞の変性等がみられ、中等度から高度の心不全状態がある。このような状態のハムスターに全身麻酔下で骨髄細胞の採取後、開胸および骨髄幹細胞の心筋内直接筋注という侵襲的治療法は負荷が強すぎて耐えられないと考えられた。 そこで、自家骨髄幹細胞移植を開胸下心筋内への直接筋注ではなく、静注法または自家骨髄幹細胞を末梢血へと動員できる顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)注射法で試みることにした。DCMモデルハムスターUM-X7.1(10匹)に対し、自己の骨髄から取り出した骨髄幹細胞を静注したところ、1週間後に摘出した心組織にDiI陽性の心筋細胞や血管内皮細胞が確認できた。来年度は、長期予後、心機能の改善およびそのメカニズムについて検討する予定である。
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