研究概要 |
25週齢の拡張型心筋症(DCM)モデルハムスターUM-X7.1およびコントロールとしてのGoldenハムスターについて、全身麻酔後、両側腸骨から約2mlの骨髄液を採取し、未分化な幹細胞を含む単核球をDiIでラベルし、全身麻酔開胸下に左室心筋内に直接筋注、あるいは静注したが、死亡例が多かった。25週齢のDCMモデルハムスターUM-X7.1では、すでに拡張末期径の増大、駆出率の高度の低下、心重量の増大、左室壁の広範な線維化、心筋細胞の変性等がみられ、中等度から高度の心不全状態がある。このような状態のハムスターに全身麻酔下で骨髄細胞の採取後、開胸および骨髄幹細胞の心筋内直接筋注という侵襲的治療法は負荷が強すぎて耐えられないと考えられた。 そこで、骨髄の間葉系幹細胞を末梢血に動員する作用が報告されているG-CSFを用いて検討した。DCMモデルハムスターUM-X7.1にG-CSF(10μg/kg/day)を、15週齢より15週間(1週間当たり5日間)、コントロールとして同量の蒸留水を皮下注射した。30週齢における生存率はG-CSF治療群が100%で、:コントロール群は53%であり、危険率0.01%以下で有意差があった。G-CSF治療群では、左室の拡張および線維化が抑制され、駆出率、左室拡張終末期圧などの左室機能が改善され、オートファギー様の心筋細胞の変性・脱落の減少および膜透過性の減少がみられた。また、TNF-αの発現の減少およびMMP-2,9の発現の増加がみられた。さらに、僅かながら、骨髄由来の幹細胞の心筋細胞への分化がみられた。 G-CSF治療は心筋症から心不全に移行するのを防ぐ新しいアプローチであると示唆された。
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