高血圧症は罹患人口の最も多い疾患であるが、その発症メカニズムにはいまだ不明なところが多い。近年、低分子量GTP結合蛋白質Rhoが血管平滑筋収縮機構、細胞増殖作用などを介して、循環器疾患(高血圧、狭心症、心筋梗塞など)の病態に深く関与していることが示唆されている。我々が分離・同定した食塩耐性遺伝子STPは、低分子量G蛋白Cdc42の結合蛋白CIP4と同一であり、腎臓の近位尿細管に局在し、ナトリウム再吸収に関連した因子と考えられる。Cdc42は細胞骨格形成、細胞接着を制御することにより細胞の電解質輸送、脂質代謝を制御すると考えられ、本研究では、STPと細胞骨格形成、Na-輸送との関連性を検討する。 (1)STP野生型、変異型黄色蛍光タンパク質発現系の確立 我々が分離同定したSTPの野生型、変異型遺伝子を、黄色蛍光タンパク質発現ベクターpEYFP-C1にクローニングし、COS-1細胞に発現する系を確立した。野生型では細胞質に、変異型では核近傍に発現を認めるが、現在、変異型の発現が、ゴルジ装置なのか、あるいは異常タンパクとして凝集塊を形成しているのかを検討中である。 (2)STP及びCdc42発現とアクチン等細胞骨格形成蛋白発現について 上記の遺伝子を発現した細胞において、アクチン、Cdc42、NHE1タンパクの発現の変化について検討した。これらの結果については、現在、論文投稿中である。 (3)トランスジェニックマウスの作製 現在F1マウスのスクリーニングを分担研究者(辻 祐治)により、行っているが、ホモ接合体の同定には至っていない。過剰発現において、致死的に作用する可能性もあり、ヘテロでの解析、死亡児の解析を行っている。
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