研究概要 |
伸展刺激受容チャネルの候補遺伝子の1つとしてgrowth factor responsive channel (GRC)を心筋からクローニングすることに成功した(J Cell Biol.161 957-967,2003)。電気生理学的解析によりこのチャネルは伸展刺激、浸透圧に反応して活性化される非選択的カチオンチャネルであることが判明した(Circ.Res.93 829-838 2003)。 抗体を作成して病的心筋におけるこの蛋白質の発現異常、心筋症ハムスター筋細胞およびこのチャネル蛋白を強制発現した細胞でのカルシウム動態異常、トランスジェニックマウスにおける心筋症病変の発症の有無等検討した。このチャネル蛋白質が病態的に重要である可能性が強く示唆された。正常筋細胞では、ジストロフィン複合体をはじめとした細胞骨格系蛋白質が完全で機械的刺激などに対して細胞膜が強化されている。その場合このチャネルは細胞の中にある。刺激により、細胞膜へ局在変化し、Ca^<2+>流入に寄与するがCa^<2+>が排出系により排出され細胞内Ca^<2+>濃度が下がるとチャネルもまた細胞の中にひっこむ。こうして細胞内Ca^<2+>代謝は正常に保たれているが、細胞骨格系に異常を持つ病態筋では、細胞膜にチャネルが局在しておりこのチャネルを介するCa^<2+>流入のため常に細胞内Ca^<2+>濃度が高い状態になっている。刺激でCa^<2+>流入がさらに上昇し排出系によってもCa^<2+>代謝が維持できなくなると筋細胞変性を引き起こすという筋変性メカニズムが考えられた。 GRCの病態での役割をチャネルを減少させる(アンチセンスGRCによる)、または活性を抑制させる(GRCのドミナントネガティブ体の導入)ことによりしらべ、現在個体レベルでの解析もおこなっている。今後どうして細胞骨格系異常による病態の場合チャネルが細胞膜に局在しているのか。どうしたら中へ引っ込ませることができるのかに焦点をしぼって研究したい。
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