研究概要 |
本研究では心筋細胞のみならず、遺伝子導入の際のバリアとなる血管内皮細胞についても培養細胞を対象に遺伝子導入を試み、各種超音波照射条件、超音波造影剤の種類の間で導入条件を比較検討した。 ラット新生仔培養心筋細胞及びヒト培養静脈内皮細胞を対象として、サイトメガロウィルスエンハンサー/プロモーター領域を有するプラスミド(pALTER-MAX, Promega)に組み込んだレポーター遺伝子(luciferase)の導入を、複数種のマイクロバブルの併用・非併用下で、超音波周波数、照射エネルギー、照射時間、照射回数を変えて導入効率が最大となる条件を検討した。超音波照射条件は臨床で頻用する1〜3MHzを用いてパルス波・連続波超音波を使用し、音響出力も臨床の規制範囲内である0.1〜1.0W/cm^2で検討した。マイクロバブルとしては、アルブミンシェルに生体内での気泡の安定性が確立している8フッ化プロパンガス(C_3F_8)を注入した微小気泡剤を自作したものと、米国で市販されているアルブミンシェルマイクロバブル、ならびに本邦ですでに超音波造影剤として使用されているガラクトース製剤を使用した。 培養心筋細胞では、パルス波超音波に比し連続波が、ガラクトース製剤に比しアルブミン製剤が、照射エネルギーの高い方が標識遺伝子導入効率が高かった。照射時間と回数は影響しなかった。培養血管内皮ではパルス波に比し連続波が、アルブミン製剤に比しガラクトース製剤が、照射エネルギーの高い方が導入率が高かった。 予備的に閉胸麻酔ラットの心臓にカテーテル注入にて超音波遺伝子導入を試みると蛋白発現レベルは血管内皮と同程度であった。In vivoでの超音波遺伝子導入では血管内皮での発現レベルが全体への導入効率を決定すると予想された。
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