研究概要 |
昨年度までの本研究においては、培養細胞を対象に超音波造影剤を併用した超音波遺伝子導入法に関し種々の照射条件について検討を行った。その結果、対象となる細胞種によって有効な超音波造影剤の種類が異なる事、音響出力に比例して導入効率は増加するが同時に細胞死も増加することが判明した。かかる結果が生体内においても同様に成立するかにつき、本年度の検討を行った。サイトメガロウイルスエンハンサー/プロモーター領域を有するプラスミド(pALTER-MAX,Promega)に組み込んだレポーター遺伝子(luciferase)を超音波造影剤とともに、麻酔下にラット左心室内に挿入したカテーテル先端より注入し、ラット前胸部より超音波照射を行った。照射周波数は培養細胞にて高発現を認めた1MHzとした。パルス波超音波・連続波超音波、アルブミン製剤造影剤・ガラクトース製剤造影剤のいずれもが最大音圧にてわずかな発現を左心室前壁に認めたのみであった。luciferase発現量としては培養血管内皮細胞にて発現したレベルを越えなかった。また超音波照射の届きにくい側壁・後壁における発現は皆無であった。 以上より生体内カテーテル注入による心筋特異的遺伝子発現は可能だが低レベルであって、心筋細胞内に治療目的遺伝子を到達させるには、1)目的導入部位に遺伝子をターゲッティングする手法の改良、2)血管内皮を越えて背後にある心筋に到達させうる遺伝子導入用の超音波造影剤の開発が必要であることが示唆された。
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