研究課題/領域番号 |
14570710
|
研究機関 | 国立循環器病センター研究所 |
研究代表者 |
岸本 一郎 国立循環器病センター研究所, 生化学部, 室長 (80312221)
|
研究分担者 |
小川 佳宏 京都大学, 医学部・研究科, 助手 (70291424)
齋藤 能彦 奈良県立医科大学, 第1内科学教室, 教授 (30250260)
寒川 賢治 国立循環器病センター研究所, 生化学部, 部長 (00112417)
|
キーワード | ナトリウム利尿ペプチド / 心筋梗塞 / リモデリング / 心不全 |
研究概要 |
本研究では、心疾患におけるCNPとその受容体の情報伝達系の(1)発現・分泌調節と(2)投与効果を明らかにすることにより、この内因性ペプチドの疾患における病態生理的意義の解明と循環器病治療薬としての有用性確立を図り、臨床応用へ繋げることを目的としている。本年度は最終年であるが、この一年間で以下の成果に到達した。 (1)CNP発現とその調節に関して 1)われわれが確立したCNPの定量PCR法により、心筋梗塞急性期に残存心筋でのCNP遺伝子発現が著明に亢進することが明らかになった。 2)また、同様に検討したCNP特異的免疫染色法で、心臓間質の線維化巣からCNPが分泌されていることを証明した。 これらの事実より心筋梗塞急性期に内因性CNPが心臓間質から分泌されることが初めて明らかになった。 (2)外因性に投与したCNPの効果に関して 3)浸透圧ミニポンプを用いて心筋梗塞ラットにCNPを2週間持続投与すると、心筋梗塞後の心機能低下を著明に改善し心不全を予防することを明らかにした。 4)この心機能の改善は残存心筋における心臓線維化・心筋細胞肥大の劇的な改善を伴っていた。 5)さらに検討した、毛細血管密度はCNP投与で高くなっており局所血流改善効果が考えられた。 これらの結果より外因性に投与したCNPが心筋梗塞後残存心筋のリモデリングを改善し心機能を高めて心不全を抑制することが明らかとなった。既に心不全治療薬として臨床応用されている心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)や脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)とは異なりCNPは血行動態に対する影響が軽微であり、急性心筋梗塞などの血行動態の不安定な時期でも血圧低下の副作用の心配がなく、高濃度で使用できることを証明した。 本研究費によりそれまで明らかではなかったCNPの病態生理的及び治療的意義を世界で初めて解明できた。今後これらの系を用いてCNPとその受容体の循環器疾患における意義をさらに追求し、臨床治療薬として開発を進めて行きたい。
|