研究概要 |
(1)21-水酸化酵素欠損症の死亡例の調査 新生児マススクリーニングで発見されたにもかかわらず,その後死亡した本症について調査を行い10例の死亡が認められ,急性副腎不全が関連していた。 (2)21-水酸化酵素遺伝子のアデノウィルスベクターによる導入 アデノウィルスベクターにヒトCYP21遺伝子をクローニングした。これを生後8週齢の欠損マウスの副腎に導入し,血漿コルチマステロンを測定した。その結果,遺伝子導入後徐々に上昇し,導入後7-21日まで正常レベルを維持した。その上昇は遺伝子導入後50-60日後まで認められたが,その後は低下した。次に遺伝子導入後の副腎の組織学的変化について観察した。欠損マウスでは副腎皮質,髄質の形態異常が存在するが,遺伝子導入後はこれらの所見の改善が見られた。 (3)視床下部-下垂体-副腎のフィードバックが正常化しているかを検討した。遺伝子導入後,コルチコステロンは上昇したが,その前駆物質であるプロゲステロンの低下は認めず,欠損マウスと同程度,下垂体のPOMCのmRNAの発現も欠損マウスと変化がなかった。このことは導入後の血漿コルチコステロンの上昇が十分ではなかった,あるいは胎生期からの活性化が,血漿コルチコステロンの上昇によっても抑制できないことによるかもしれない。 (4)21-水酸化酵素欠損症と17-水酸化酵素複合欠損症の病因解明 21-水酸化酵素欠損症と17-水酸化酵素複合欠損症の存在が示唆されていたが,その病因は不明であった。今回これらの酵素の複合欠損を示した患者で,これらの二つの酵素に共通の電子伝達に必要なMicrosomal-P450 oxidoreductase(POR)遺伝子を解析し,異常を同定,発現実験でこの変異がPORの機能を低下させることを証明した。PORの異常によってヒトの疾患がおこることを世界で初めて示した。
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