症候性XMRの一つである、X連鎖精神遅滞・αサラセミア症候群(ATR-X)の日本人症例の集積を進め、これまでに24家系27例の症例を集積することができた。臨床的確診例18家系21例、疑診例6家系6例を対象とした解析の結果、24家系27例中、21家系24例で遺伝子変異を同定した。主要な2つの領域ADDドメインに12家系14例、helicaseドメインに3家系4例でミスセンス変異を同定した。また、一塩基置換によるスプライシング変異3家系3例、一塩基挿入によるフレームシフト、偽遺伝子の挿入によるスプライシング変異を各1例同定した。現時点で、確診例2家系2例、疑診例1家系1例では変異は同定されていない。遺伝子型とHbHの有無には相関はなく、その他の表現型は変異の種類による違いはなかった。HbHの有無に関わらず、高率にATRXの変異が同定されたことはATR-Xの臨床診断においてHbHは必須ではなく、特徴的な臨床症状から行われるべきであることを示す。 このように本年度はゲノムDNAを用いた、遺伝子診断法を確立し、遺伝子型と表現型との関係を示すことができた。しかし、結果はかならずしもはっきりしたものではなく、遺伝子型と表現型の関係の解明には、症状のそろった典型例以外の症例を解析することが必要であることが明らかとなった。これまでの報告で非特異的X連鎖精神遅滞のなかにもATRX遺伝子変異が原因である例が存在することが示されている。より多くの患者の解析を可能とするために、現在、我々は、DHPLC法を用いたATRX遺伝子変異のスクリーニング法を開発中である。
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