研究概要 |
The immune dysregulation, polyendocrinopathy, enteropathy, X-linked syndrome(IPEX)は多彩な自己抗体の出現を特徴とする予後不良な全身性自己免疫疾患である。その責任遺伝子であるFOXP3はforkhead/winged-helix familyに属する転写因子と考えられ、T細胞活性化調節に重要な役割をになっていると推測されており、最近になって調節性T細胞との関係も報告されている。我々は、FOXP3遺伝子変異を認め免疫抑制剤療法により長期生存しているIPEX患者において、in vivoおよびin vitroでの免疫学的機能解析を行った。IPEX患者末梢血リンパ球の解析では、T細胞、B細胞ともにin vivoで強く活性化されており、メモリー細胞が優位となっていた。特にB細胞では活性化マーカーが強く発現し、クラススイッチの亢進所見も認められ、T細胞のヘルパー活性が異常に増強している結果と考えられた。一方、患者末梢血由来CD4陽性T細胞株での解析では、CD13発現増強、サイトカイン産生増加、免疫抑制剤による増殖抑制効果の減弱などが認められ、CD4陽性T細胞自体の活性化調節が障害されている可能性も示唆された。FOXP3は主に末梢血中CD4陽性T細胞に発現して機能していると考えられているが、FOXP3の欠損によりCD4陽性T細胞のヘルパー活性が異常に増強し、その結果としてB細胞による抗体産生や細胞傷害性T細胞による組織障害などが異常に亢進し、IPEXの病態が形成されている可能性が考えられた。以上の結果から、FOXP3がT細胞活性化においてnegative regulatorとして重要な機能を担っているとともに末梢性のトレランスの維持にも深く関与していることが強く示唆された。
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