研究概要 |
平成14年度には、FOXP3を欠損するIPEX患者のin vivo免疫機能とともに患者末梢血由来CD4陽性T細胞株を詳細に解析した。その結果、FOXP3の欠損によりCD4陽性T細胞のヘルパー活性が異常に増強し、B細胞による抗体産生や細胞傷害性T細胞による組織障害などが異常に亢進して、IPEXの病態が形成されている可能性が考えられた。その間に他の研究グループから、FOXP3が調節性T細胞の分化に必須の分子であることが発表され、FOXP3の機能が更に注目されている。 そこで平成15年度には、FOXP3そのものの発現状態を蛋白レベルで確認するために、塩基配列から予想される合成ペプチドでウサギを免疫してポリクロナール抗体を作製した。PHA,抗CD3/CD28抗体などのT細胞活性化因子による刺激後にFOXP3遺伝子発現量、蛋白発現量の変化についてRT-PCR法、Western blot法で検討した。正常者末梢血リンパ球では刺激前にFOXP3がRNAレベル、蛋白レベルで既に発現しており、各種刺激によってもその発現量は有意の上昇を認めなかった。つまり、FOXP3は特定の細胞に恒常的に発現されており、T細胞活性化とは直接リンクしていないと考えられた。 次に、この抗体を用いて細胞質内FOXP3同定の可能性を検討した。細胞表面抗原(CD4,CD8,CD19)を染色した後、細胞膜のpermialization/fixationをし、抗体を反応させて細胞質内FOXP3を染色(間接法)して、Flow cytometlyで解析した。FOXP3の発現を認めるT細胞株では、ある程度のFOXP3発現量が確認されたが、正常者末梢血リンパ球においては解析に十分な輝度を得ることができなかった。しかし、この方法は特に臨床(自己免疫疾患)における調節性T細胞研究の有力な手段となることから、さらなる改良が必要である。 我々はこれまでに2例のIPEX患者でFOXP3のsmall deletion及びpoint mutationを同定したが、これらの変異が実際の細胞でどの様に発現されるのかをin vitroで確認するために、これらのクローンをレトロウイルス発現ベクターに組み込みこんだ変異体を作製した。これをパッケージング細胞に導入してウイルス産生細胞を作製し、リンパ球に変異遺伝子を導入して発現実験をする準備を整えた。
|