研究概要 |
平成15年度は、インフォームド・コンセントを得た後、主に樹立早期の原発性免疫不全症(運動失調毛細血管拡張症[AT]、Wiskott-Aldrich症候群[WAS]、重症複合免疫不全症[SCID]、Common variable immunodeficiency)のEBウイルス(EBV)陽性リンパ芽球を用い1.浮遊培地における細胞増殖能、2.軟寒天培地培養法による癌原性獲得の有無、3.潜在EBV関連抗原(EBNA-1、-2、-3a、-3b、-3c、LP、LMP-1、-2a、-2b)の発現、4.染色体分析、5.各種オンコジン、癌抑制遺伝子の発現、6.細胞内増殖関連転写因子NF-κBの発現、7.抗B細胞モノクローナル抗体添加による増殖能などへの影響、8.サイトカインの発現・産生および、9.EBV特異的細胞障害性T細胞(EBV-CTL)およびNK細胞活性をサイクロスポリンA添加・非添加にて、特にインターフェロンγを中心として検討する。ことを行い、健康人との比較検討を行った。 その結果、対象とした原発性免疫不全症では、一般にEBV-CTL活性の低下が顕著でインターフェロンγ産生の低下が、ほぼ相関して認められた。ATの一部で、浮遊培地における増殖能の増加(最高濃度;2.6±0.2x10^6/ml, P<0.05)、コロニー形成率の増加(最高10.1%)を認めた。その様な細胞では、非特異的な染色体異常とともにNF-κBの発現の増加を認めた。また、オンコジンでは、その様な細胞株の一部でmyc、ras-familyなどの活性化があったが一定の傾向を認めなかった。潜在EBV関連抗原は、全例で全て発現していた。抗B細胞モノクローナル抗体添加による、抗細胞増殖効果は一般に対照と差を認めなかったが、AT由来細胞の一部で抵抗性の増加をみた。
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