研究概要 |
本研究の最終目的は、動脈管における一酸化窒素(NO)産生の制御因子を探り、動脈管の開存・閉鎖のコントロールを容易にすることにより、動脈管開存症を発症する未熟児や動脈管依存性心疾患をもつ新生児の生命予後を改善することにあった。 1 研究課題1について 仮説「胎児期の高濃度の血中estrogenはNOを介して胎児の動脈管を開存させる機転に寄与している。また生後動脈管が閉鎖する機転にもそのestrogenの供給が絶たれたことが関与している」に対し、in vivoとin vitroの実験を施行した。まず、estrogen receptor blockerのtamoxifenとICI 182780、cyclooxygenase inhibitorのindomethacin、NOS inhibitorのL-NANEを妊娠ラットに皮下投与し、その後胎仔を摘出・瞬間凍結したのち組織切片を作成し、切片上の肺動脈と動脈管の血管径を比較し動脈管収縮の有無を調べた。indomethacin、L-NAMEは予想通り動脈管を収縮させたが、estrogen receptor blockerであるtamoxifenとICI 182780は有意な収縮をさせなかった。また、In vitroの実験で上記の薬剤を用いてラット胎仔の動脈管の等尺性張力の測定を試みたが、有用な情報を得ることができなかった。(結論)ラット動脈管においてestrogenを介したNOの作用を証明することはできなかった。 2 研究課題2について 仮説「未熟児において、indomethacinに反応する動脈管と反応しない動脈管では、ecNOS geneのpolymorphismのパターンに差がある」に対し、正常新生児と動脈管開存を発症した未熟児におけるecNOS gene Exon7のpolymorphism、894G/T ; Glu296Aspの同定を行った。PCRで増幅後direct sequenceによって解析したが、症例数が不足しているためか、両群間に同遺伝子のpolymorphismのパターンに有意差は認められていない。(結論)症例数を増やすと有意差が認められる可能性があると考え、今後も検討を続ける。 3 その他 国外研究協力者のR.I.Clyman教授(アメリカ合衆国)と協力し、NOの役割の検討に、やはり動脈管を拡張するプロスタグランディンEとそのリセプターサブタイプ(EP2,EP3,EP4)の役割に関する検討も加えて、後述の研究発表を行った。
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