研究課題/領域番号 |
14570722
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
須磨崎 亮 筑波大学, 臨床医学系, 助教授 (40163050)
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研究分担者 |
小野寺 雅史 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (10334062)
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キーワード | Epstein-Barr ウイルス / X連鎖性リンパ増殖症候群 / SAP (SLAM-associated protein) / SH2D1A / 先天性免疫不全症 / T細胞 / リンパ球 / 血管炎 |
研究概要 |
X連鎖性リンパ増殖症候群(XLP)は、重症EBウイルス(EBV)感染症を特徴とする先天性免疫不全症として疾患概念が提唱された。しかし、病因遺伝子SH2D1Aが発見されてから、無症状の保因者やEBVと関係ない悪性リンパ腫患者などでもXLPの遺伝子診断が下されるようになり、その症状や病態の広がりは拡大しつつある。一方、本症に典型的な致死的伝染性単核症患者と異なり、あらたに遺伝子診断されたいわば「非典型的な症状」の患者をどのように治療すべきか、現在は全く不明である。本研究はXLPの分子病態を基盤に据えて、XLPの早期診断と治療の新たなストラテジーを確立することを最終目的として実施された。その結果、1)抗SAPモノクローナル抗体の作成とflow cytometryによる患者リンパ球中のSAP蛋白検出により、従来の遺伝子診断より簡易な診断法が確立された。2)XLP患者の母親(保因者)のTリンパ球におけるSAP蛋白量の変動を測定することにより、T細胞の活性化に伴ってSAP蛋白量は大きく変動すること。逆に、XLPの本態として、「T細胞の活性化に必須のSAP蛋白が誘導されないために、免疫が賦活化された際に免疫担当細胞の相互作用が適切に調整されないこと。」が判明した。3)遺伝子診断されたXLP患者の追跡調査で、致死性伝染性単核症や悪性リンパ腫を乗り越えて生存した2例の患者で、さらに数年から十数年後にlymphocytic vasculitisをきたしたこと。とくにいずれも脳血管炎の病像をとり、免疫抑制療法が有効であるが、XLPの自然歴は極めて悪いことが明らかになった。 結論:XLPの早期診断には、flow cytometryが有用なこと、XLPの遺伝子治療では免疫活性化に伴って誘導型のSAP発現が必要なこと、XLP患者の自然歴から全ての患者に造血幹細胞移植が必要なこと、が本研究により明らかになった。
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