研究概要 |
Respiratory syncytial virus(RSV)感染は、気管支喘息の発症や増悪に関与していると考えられている。RSVに感染した患者からの末梢血および鼻咽頭吸引物に好酸球が増加しているとの報告があり、RSV感染における好酸球の関与が示唆される。好酸球は、組織傷害性の顆粒蛋白や活性酸素(O2^-)を放出し、気道炎症を引き起こすことから、喘息において重要な役割を果たしている。今回、我々は、RSVは、単独では、好酸球からのO2^-産生を来さないが、血小板活性化因子(PAF)と同時に添加すると好酸球からのO2^-産生を増強することを明らかにした。また、この増強したO2^-産生は、細胞を浮遊すること、またβ2イシテグリンに対するCD18抗体で前処理することにより抑制された。さらに好酸球表面上のαMβ2(CD11b/CD18,Mac-1)の発現を検討したところ、O2^-産生と同様に、RSV単独では増強しなかったが、PAFと同時に添加するとαMβ2の発現を増強することがわかった。以上より、RSVの好酸球活性化の増強作用には、αMβ2を介した細胞接着が重要な役割を果たしていることが明かとなった。次に、RSVが気道上皮を介して好酸球活性化を増強しているか否かを検討するため、RSVを2種類の気道上皮由来細胞(BEAS-2B)に感染させ、好酸球の上皮への接着と脱顆粒について検討した。BEAS-2BにRSVを48時間感染させ、4時間TNF-αで処理したのち、好酸球を添加し、PAF、IL-5またはPMAで刺激した。その結果、好酸球の上皮への接着および脱顆粒が増強していることが分かった。 以上よりRSVは、直接的にも、また気道上皮を介して間接的にも好酸球を活性化し、喘息の病態である気道炎症の亢進に関与していると考えられた。
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