本年度は主として、川崎病、インフルエンザウイルス感染症などの急性熱性疾患を中心に、末梢血単球の表面抗原発現ならびにHO-1産生を検討した。 正常対照に比べ川崎病急性期では、単球の一部が強く活性化、CD16抗原ならびにHLA-DR抗原を強く発現していた。しかし、大部分の単球は正常対照に比べこれらの抗原発現が低下していた。これらの結果は、川崎病急性期における単球活性化が一部の分画に限定されていることを示唆していた。一方、同様に急性熱性疾患であるインフルエンザウイルス感染症では、単球の大部分が活性化形質を示し、軽快と共に活性化単球は減少した。川崎病急性期に認められたような、抗原発現の低下は観察されなかった。 一方、HO-1産生を単核球を用いたreal time PCR法により定量した。正常対照末梢血単核球においても低レベルのHO-1 mRNAが常に観察された。急性感染症の多くでは、末梢血単核球のHO-1 mRNA発現は増加、特にインフルエンザウイルス感染症では明らかにHO-1 mRNA発現が増強していた。末梢血単核球のうち、HO-1産生細胞は単球の一部であることが免疫組織染色で明らかにされた。また、HO-1産生細胞は単球の一部であり、この分画はCD16陽性、HLA-DR強発現細胞であると推定された。 これらの結果から、単球中のCD16陽性、HLA-DR強発現細胞は炎症抑制機能を有し、生体にとって有害な炎症反応を制御するために、種々の急性炎症性疾患において重要な機能を発揮している可能性が示唆された。今後は、これら炎症制御機能を有する単球分画の機能的役割についてさらに検討する予定である。
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