タンデム質量分析法新生児マススクリーニングをわが国において実用的なシステムに発展させることを目的とした大規模スクリーニング実施に向け、個別課題を検討した。 既診断患者の新生児濾紙血分析では、グルタル酸尿症II型(GA-II)、中鎖アシルCoA脱水素酵素(MCAD)欠損症、極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症、複合カルボキシラーゼ欠損症などで、カットオフ値の精度が確認できた。 発見された患者の病型・重症度診断については、広島大学小児科・京都大学小児科との共同研究により、酵素活性測定・DNA解析が行われ、治療上の指針策定に利用できる可能性を明らかにできた。 分析法の改良については、試料調整における防錆対策としてプラスチック製ノズルドライアをオーダーメイドで作成した。誘導体化試薬を自家調整して効率や精度を確認し、試料調整経費を大幅に低減できることを示せた。 2003年末までに分析検体数は約20万に達し、患者数も25名となったことから、各疾患の概略の頻度を示すことが出来た。即ち、欧米諸国ではフェニルケトン尿症とMCAD欠損症の頻度が高く、発見患者の約2/3を占めるが、わが国ではプロピオン酸血症やグルタル酸尿症I型などの有機酸代謝異常症の頻度が相対的に高く、また、GA-IIやMCAD欠損症などの脂肪酸産科異常症もそれなりの頻度で存在することから、これらの疾患を中心としたスクリーニングシステムを構築していく方向性を明らかにできた。
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