目的:授乳期から成熟期にかけてダイオキシンの暴露が雄性生殖機能に及ぼす影響を明らかにする。 方法:出生から離乳までは母体皮下に、その後は仔ラット皮下にTCDD投与し(8週齢まで)、精巣機能を検討した。TCDD投与量は300及び1000ng/kg/weekとし、週一回皮下注投与した。9週齢で屠殺した。昨年度と同様の測定以外に、電子顕微鏡による精細管組織とコンピューター解析による精子機能の検討を行なった。 結果:精子の運動機能は、総精子運動率はコントロール群75%に対し、TCDD投与群は300投与群で48%、1000投与群で40%と有意に低下し、前進運動率も低下した。運動機能は差がなかった。精子形成のstep9-10のelongate精子細胞の電顕像では、TCDD投与群のsmooth ER (endoplasmicreticulum)膜及びミトコンドリア膜に異常な沈着が認められた。step 16-17の成熟したelongate精子細胞の電顕像でも、精子細胞尾部のミトコンドリア膜に異常な脂質の沈着が認められた。TCDD処置群の肝臓、前立腺のCYP1A1の発現は明らかに高値を示し、用量反応性を認めた。精巣では発現は認めなかった。ER遺伝子の発現は精巣では変化なかったが、前立腺でERβ遺伝子の発現がTCDDにより増加した。AR遺伝子の発現は精巣・前立腺ともにTCDD処置により増加した。inhibin/activinの各subunit遺伝子の発現は精巣でαとβ-B subunit遺伝子発現がTCDD処置により増加した。前立腺ではβ-A、β-B subunit遺伝子発現がTCDD処置により増加した。 PHGPx遺伝子発現は精巣では差を認めなかったが、前立腺ではTCDD処置により増加した。 まとめ:TCDDは精巣とくに精子機能、内性器に影響することが明らかとなった。
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