研究概要 |
無毒性に近い低用量と高用量TCDD暴露が幼弱ラット精巣機能に及ぼす影響を検討した。 1、低用量TCDD暴露では、10ng/kg/dayを7日毎に、妊娠7日目から分娩後14日目まで5回母体に投与した(21日で離乳)。21日目に屠殺、外表奇形,内臓奇形の有無を確認し臓器を摘出した.外表奇形はなく、性腺,肝,腎,副腎,胸腺の重量も対照と差を認めなかった。精巣組織はPAS染色して観察した。精細管、生殖細胞数、間質細胞に異常を認めなかった。TCDD処置ラット肝臓のCYP1A1遺伝子の発現は牡牝関係なく、明らかに高値(約10倍)を示した。精巣のinhibin/activinの各subunitの発現はβ-Aが6週齢で減少する加齢変化がみられるが、TCDD処置による変動は認めなかった。精巣のERα発現はTCDD処置により3週齢でコントロールに比して明らかに増加したが、6週齢では差が無かった、。ERβ発現はTCDD処置により3週齢ではわずかに増えたが、6週齢では明らかに増加した。AR発現はTCDDにより影響は受けなかった。 2、高用量TCDD暴露では、投与量は300及び1000ng/kg/weekとし、出生0日、1週、2週目は母体に投与し、離乳する3週目から8週目までは仔ラットに直接皮下注した。9週齢で屠殺した。精巣上体尾部より採取した精子の運動機能では、TCDD投与群は300投与群で48%、1000投与群で40%と有意に低下し、前進運動率も有意に低下した。電顕像では、精子形成のstep9-10のelongate精子細胞のsmooth ER膜及びミトコンドリア膜に異常な沈着が認められた。step 16-17のelongate精子細胞の電顕像でも、精子細胞尾部のミトコンドリア膜に異常な脂質の沈着が認められた。ER遺伝子の発現は精巣では変化なかったが、前立腺でERβ遺伝子の発現がTCDDにより増加した。AR遺伝子の発現は精巣・前立腺ともにTCDD処置により増加した。inhibin/activinの各subunit遺伝子の発現は精巣でαとβ-B subunit遺伝子発現がTCDD処置により増加した。前立腺ではβ-A、β-B subunit遺伝子発現がTCDD処置により増加した。 TCDDは、低用量でも精巣機能を障害し、高用量では精子機能にも影響することが明かとなった。
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