研究概要 |
同種造血幹細胞移植でのGVL効果が明らかであるPhiladelphia染色体(Ph1)陽性白血病細胞株12株を対象に、TRAILの細胞死誘導と受容体発現を検討した。その結果、5株で強力な2株で中等度の細胞死誘導が観察された。一方、FasLに対しては2株がごく弱い感受性を示したものの10株は耐性を示した。TRAIL感受性はDR4/5受容体の発現と強く相関しており、decoy受容体のDcR1/2は検出されなかった。同様の結果は臨床検体でも確認された。さらに、DR4/5受容体はTRAIL結合によってNF-κBの活性化を介するsurvivalシグナルも刺激を受けることから、NF-κB inhibitorとTRAILの併用効果を検討し、TRAIL感受性の増強効果を観察した。さらにBCR-ABL特異的inhibitorのSTI571耐性株の多くがTRAILに感受性を示した。これらの結果はTRAILのPh1陽性白血病に対するGVL効果への関与の可能性と、TRAILの新たな治療薬としての有用性示唆している'(Blood, in press)。 一方、11q23転座型白血病では、化学療法に対する同種造血幹細胞移植の優位性は臨床的に確認されていない。そこで、11q23転座型白血病細胞株9株を用いTRAIL感受性を検討したところ、全株がTRAILに耐性を示した。Ph1陽性白血病を含むB前駆リンパ球性白血病細胞株では高率にTRAIL感受性を示すことから、この11q23転座型白血病細胞株でのTRAIL耐性は、臨床的にGVL効果が弱いことの一因であると考えられた。TRAIL耐性には、DR4/5受容体の低発現に加えて、FADDの低発現・FLIPの高発現、Bakの低発現、cIAP2・survivinの高発現といった機序の関与が示唆された。さらにNF-κB inhibitorによって、TRAIL感受性の増幅効果がある程度観察されたが、CHX処理では明らかな効果は観察されなかった。
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