小児白血病の化学療法による治療成績は著しく向上したが、Philadelphia染色体(Ph1)陽性白血病や11q23転座型白血病などは依然として難治であり、同種骨髄移植が積極的に行われている。同種骨髄移植の有効性は移植片対白血病(GVL)効果によることは明らかであり、GVL効果には細胞傷害性Tリンパ球(CTL)が重要な役割を果たしているが、関与する細胞傷害因子については不明な点が多い。本研究では、CTL上に発現される細胞傷害因子のうちFasLとTRAILに焦点をあてて、そのPh1陽性白血病や11q23転座型白血病に対する効果を解析した。 まず、Ph1陽性白血病では、白血病細胞株および臨床棟体はともにFasL耐性を示した。一方、TRAILは多くの細胞株で強力な細胞死誘導作用を示し、感受性はDR4/5受容体の細胞表面発現レベルと相関した。臨床検体を用いた解析でも同様の効果を認め、同種造血幹細胞移植におけるPh1陽性白血病に対するGVL効果にはFasLよりもTRAILが重要な役割を果たしていることが明らかになった。 次に、11q23転座型急性リンパ性白血病でも同様の検討を行なった。11q23転座型急性リンパ性白血病細胞株はFasLに対してはある程度の感受性を認めたが、TRAILには高度の耐性を示した。臨床検体ではFasLおよびTRAILに対する耐性が観察され、FasLおよびTRAIL耐性が11q23転座型急性リンパ性白血病でGVL効果が弱いことの一因である可能性が示唆された。
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