研究概要 |
p16を非常に強く発現する小児ALL由来細胞株KOPN-79においては、p16遺伝子に構造異常は認められず、p16蛋白の細胞内分布も正常であった。また、他のALL細胞株の数10倍のp16 mRNAが検出された。p16発現量の増加はCDK4やCDK6の活性を強く抑制するため、恒常的にp16を高発現している本細胞株においては、他の細胞回転調節分子群が正常と仮定すると、他のALL細胞株と同様に細胞回転を繰り返して増殖することは不可能と思われた。そこで、cyclin群(cyclin A, D1, E)、CDK群(CDK2,4,6)、CKI群(p15, p21, p27)の発現をWestern blot法で検討したが、著変は認められなかった。最後にRbの発現を調べたところ、E2F-1を代表とする転写因子群の結合部位(pocket region)を認識する抗体では発現が認められなかった。そこで、pocket regionより5'-regionを認識する抗体を用いたところ、通常より低分子量のRb蛋白が検出された。免疫沈降法を用いた検討で、この異常Rb蛋白は非リン酸化状態でもほとんどE2F-1と結合せず非機能性と判明した。Rb cDNAの全領域をカバーできるようにプライマーを3セット設定し、RT-PCR法でRb mRNAの発現を検討したところ、pocket region(exons 13-22)より5'側に設定したプライマーセットでだけmRNAが検出された。したがって、pocket regionの一部を含む3'-regionが欠失したtruncated Rb蛋白の存在が想定された。また、Northern blot法では、wild-typeより数kbサイズが大きいmutated Rb mRNAが検出されたが、他のALL細胞株のRT-PCR法で得られた3プローブを用いたSouthern blot法で、KOPN-79のRb遺伝子の一方のアレルは欠損しており、他方のアレルはintron 17で切断されてexon 18以降を欠失し、3'端は未知の遺伝子と非機能的に融合していることが証明された。p16の発現が正常あるいは欠失しているALL細胞株(n=10)では、Rb遺伝子/Rb蛋白に異常は認められなかった。
|