研究概要 |
研究目的 遺伝性ムコ多糖症はリソソーム酵素蛋白質の機能障害により発症する先天性代謝異常症である.代謝異常症の治療法は,遺伝子治療,骨髄移植,酵素補充療法が実施または開発中であるが,骨および中枢神経への効果はまだ期待が持たれていない.本研究はムコ多糖症の分子病態を明らかにして,有効な治療法開発へ結びつけることを目的とする. 研究結果 1.IDS酵素蛋白質の構造と機能解析 homology modeling法にてIDS(MPSII型欠損酵素)の立体構造モデルを構築した.このモデルを基にして,遺伝子変異により引き起こされるアミノ酸置換の酵素蛋白質立体構造への影響(機能発現、安定性)をコンピューターシュミレーションにて解析した.さらに分子生化学的解析を併せて,MPSII型の臨床表現型と酵素蛋白質構造について考察したところ,GALNS(MPSIVA型)にて得られた知見と同様に,変異位置と臨床表現型との関連性が確認された. 2.Sulfatase欠損症の分子治療法の開発 IDSおよびGALNSについて,変異酵素蛋白質の構造と機能解析から得られた知見を基に、酵素の安定化や機能回復をもたらす低分子物質をin silicoにてスクリーニングした.数種類を変異酵素発現細胞に添加して、in vitro系にて酵素活性と酵素蛋白質合成過程を確認したところ,無添加と比較して数倍の活性上昇が認められた.
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