研究概要 |
乳児期発症の若年型骨髄単球性白血病(JMML)と診断された症例のなかには、ウィルス感染による類白血病反応と考えられる症例が混在している可能性があるが、両者の鑑別に有用な診断方法は現在のところ確立されていない。本年度は、長期経過観察され、その予後が明らかで、診断が確定したJMML患者検体を対象にDNAマイクロアレイ法を用いて遺伝子発現パターンを比検討した。 患者骨髄CD34陽性細胞を磁気ビーズ法を用いて単離(純度95%以上)、RNAを抽出、リニア増幅法にてmRNAを増幅後、標識プローブとして使用し、Genemed社のStar ProfilerArrayを用いて治療前後における遺伝子発現の相違を検討した。その結果、FRAP(Human FKBP-rapamycin associated protein)とSyk(Human spleen tyrosine kinase)は治療後有意に発現が増強し、c-jun, TGF-beta receptor III(Human transforming growth factor-beta receptor IIIおよびIL-2(Human interleukin 2)は治療後有意に発現が低下していた。これら5個の遺伝子はいずれも、細胞内シグナル伝達や細胞の腫瘍化、分化、増殖に関わる遺伝子であった。これらの結果より、JMMLにおける遺伝子発現の変化の検討にDNAマィクロアレイ法は有用であると考えられた。 次年度はウィルス感染による類白血病反応における遺伝子発現とJMML治療前における遺伝子発現の相違を検討し、鑑別に有用な遺伝子を同定し、診断に応用可能な簡便な遺伝子チップの作成を目指す。
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